カタログの表紙
カタログの表紙

このカタログをダウンロードして
すべてを見る

ダウンロード(840.1Kb)

制御機器の基礎知識 (8) 設定/信号入力用スイッチ

ハンドブック

スイッチ・表示灯編

操作用スイッチや表示灯の仕組みや選び方を説明した制御機器の基礎知識【スイッチ・表示灯編】。
下記章がありますが、本章では、設定/信号入力用スイッチの仕組みや選び方を解説。
他の章や操作用スイッチのカタログは操作用スイッチ特集 https://jp.cluez.biz/feature/page/101/ にてご確認ください。

1.安全規格と用語の説明
2.押しボタンスイッチ
4.表示灯
5.カムスイッチ
6.多方向スイッチ
7.トグルスイッチ
8.設定/信号入力用スイッチ
9.マイクロスイッチ
10.リミットスイッチ
11.ドアインタロックスイッチ(安全スイッチ)
12.3ポジションイネーブルスイッチ
13.資料編
※第3章は統合による欠番
※第1,2,4,5,6,7,8,9,11,12,13章はNECA Webサイトにてご確認を
お願いいたします。http://www.neca.or.jp/standard/howto/switch/
※規格に関しては、必ず現行規格のご確認をお願いいたします。

※本コンテンツの商用目的、営利目的での利用、また無断転載を禁じます。
(本コンテンツは、一般社団法人 日本電気制御機器工業会及び第三者が有する著作権により保護されております。)
※本コンテンツを利用に関して生じたいかなるトラブル、直接・間接の損害に対し、日本電気制御機器工業会及び発行者はいかなる責任も負いません。

このカタログについて

ドキュメント名 制御機器の基礎知識 (8) 設定/信号入力用スイッチ
ドキュメント種別 ハンドブック
ファイルサイズ 840.1Kb
取り扱い企業 一般社団法人日本電気制御機器工業会 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

この企業の関連カタログ

この企業の関連カタログの表紙
制御機器の基礎知識 プログラマブルコントローラ(PLC) 総集編
ハンドブック

一般社団法人日本電気制御機器工業会

この企業の関連カタログの表紙
安全ガイドブック  第7版
ハンドブック

一般社団法人日本電気制御機器工業会

この企業の関連カタログの表紙
10分でわかる機械安全
ハンドブック

一般社団法人日本電気制御機器工業会

このカタログの内容

Page1

スイッチ・表示灯編 設定/信号入力用スイッチ
Page2

制御機器の基礎知識 【スイッチ・表示灯】 8.設定/信号入力用スイッチ 目次 8.1 定義 .............................................................................. 2 8.2 種類 .............................................................................. 2 8.2.1 タクティルプッシュスイッチ .................................................... 3 8.2.2 メンブレンスイッチ ............................................................ 5 8.3 特長と構造 ........................................................................ 6 8.3.1 タクティルプッシュスイッチ .................................................... 6 8.3.2 メンブレンスイッチ ............................................................ 8 8.4 定格と特性 ........................................................................ 9 8.4.1 タクティルプッシュスイッチ .................................................... 9 8.4.2 メンブレンスイッチ ........................................................... 10 8.5 正しい選び方・使い方 ............................................................. 11 8.6 検査と試験 ....................................................................... 12 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 1
Page3

8.1 定義、8.2 種類

8.1 定義 この章では便宜上、タクティルプッシュスイッチ、メンブレンスイッチを総称して設定/信号入力 用スイッチとして扱う。 タクティルプッシュスイッチは、別名をタクティルス イッチ、タクトスイッチ、メカキースイッチとも呼び、主 として電子機器に用いる定格電圧 DC40V以下、定格電流 50mA 以下で、操作部の公称作動量が 1.5mm以下のタクティルフィ ードバック機能を有する単操作形小形プッシュスイッチを いう。なお、ここでいうタクティルフィードバック機構とは、 操作部を押した場合に、作動力が図 8.1のように中間で凹状 →操作部移動量(mm) になり、いわゆるクリック感触を得る機構のことである。 図 8.1 タクティルフィードバック感触 メンブレンスイッチとは、別名をシートキーボードスイッ チなどとも呼び、表面が基本的に平坦なシートあるいは板から成り、フレキシブルなシート材に導電性ペ ーストを印刷することにより接点が形成されることを特徴とするものをいう。 8.2 種類 設定/信号入力用スイッチ(タクティルプッシュスイッチ、メンブレンスイッチ)は、動作としてプッ シュ・オン、リリース・オフのモーメンタリ動作となっている。接点構成上から見ると、次のように分類 される。 タクティルプッシュスイッチ メカニカル接点 エラスティック(ラバー)接点 メンブレンスイッチ 印刷接点 これらは、民生・業務・産業用の各種機器や操作盤上に搭載されるスイッチである。 近年、情報化・軽薄短小化の中で、スイッチに対する要求 は、軽操作荷重によるソフトフィーリング・好フィーリング 化、プリント配線板実装微小負荷対応、小形軽薄化などが望 まれている。図 8.2 にタクティルプッシュスイッチとメンブ レンスイッチを組合わせ搭載した操作部の具体例を示す。 図 8.2 タクティルプッシュスイッチとメンブレン スイッチを用いたコピーマシン操作部 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 2 →作動力(N)
Page4

8.2.1 タクティルプッシュスイッチ

8.2.1 タクティルプッシュスイッチ タクティルプッシュスイッチは、メカニカル接点、エラスティック接点で構成されている。構造が簡単 で、薄形、小形を特長としたシングルキー構造であるため、定まった組合わせ構成のキーボードに比べ、 市場におけるメンテナンス性及び設計変更に対するフレキシブルさ、といった利点を有している。 (1) 形状 各種形状のものが、市場に出回っているが、代表的なものは、EIAJ RC-5126A(電子機器用タクティ ルプッシュスイッチ)の中でまとめており、表 8.1、図 8.3 に形状種類を示す。これらの形状の中に も、用途別に種々のバリエーションがある。 表 8.1 タクティルプッシュスイッチの形状 ① 基本タイプ (a) メカニカル接点タイプ 可動接点に金属接点を使用し、薄形を特長とするものである。操作部プランジャの形状により平 プランジャ、凸プランジャ、またアース端子の有無により分けられる。さらに大きさにより、小形 (6mm 角)タイプから、人間の指の大きさを考慮した 12mm 角のものまでがある(図 8.3 を参照)。 さらに内部に LEDを内蔵した照光タイプもある Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 3
Page5

図 8.3 代表的なメカニカルタイプの形状種類 (b) エラスティック接点タイプ 可動接点に主として導電性ゴムを使用し、メ カニカル接点タイプに比べロングストロークの ため、外形は若干大きくなっている。やはり、プ ランジャにより種類が分けられる。また大きさに より数種類が存在し、さらにエラスティック(ラ バー)接点を直接操作する薄形タイプもある(図 8.15を参照)。 図 8.4 側面操作用バーティカルタイプ ② バーティカルタイプ 側面操作を可能にするものである(図 8.4)。これも基本タイプと同じく、操作部形状が 2 種類ある (図 8.5)。また、その中でも高さの異なるものが種類としてある。 ③ ヒンジタイプ 基本タイプにヒンジボタンを取付けたもので、垂直な操作面での操作性を考慮している(図 8.6)。 図 8.5 代表的なバーティカルタイプの形状種類 図 8.6 ヒンジタイプ Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 4
Page6

8.2.2 メンブレンスイッチ

(2) 押しボタン部 照光式と非照光式に大別される。また非照光式の押しボタンは、用途により赤、黄、緑、青など の色がある。照光式は、LED を内蔵し、プランジャ面全面を照光させる面照光と押しボタンの一部 を光らせる点照光がある。図 8.7は面照光式、図 8.8は点照光式の一例である。 (3) その他 その他の種類としては、丸洗いのできるシールタイプや、表面実装ができるタイプ(SMD)などが ある。また最近では、実装性を考慮したラジアルテーピングタイプも増加傾向にある(図 8.9)。 図 8.7 面照光タイプ 図 8.8 点照光タイプ 図 8.9 ラジアルテーピングタイプ 8.2.2 メンブレンスイッチ メンブレンスイッチは、目的・用途によりカスタム設計対応することから、多種類化が顕著になってい る。ここでは、メンブレンスイッチの接点部構成、表面シート、操作性・入力確認方法についての主要な 種類を述べる(基本構造は図 8.16を参照)。 (1) 接点構成 メンブレンスイッチは、フレキシブルなシート材に導電性ペーストを印刷して接点とするもので、 一般的に可動側を上部電極シートに固定側を下部接点シートに形成する。目的や用途により固定接点 側に、フレキシブルプリント配線板や一般のプリント配線板を用いたものもある。接点間は、薄いポ リエステル材のシートをスペーサとしてギャップを形成する方法が一般的に用いられているが、接点 を印刷するシートとスペーサを一体化して折込んで使用する方法や、レジストインクを印刷して微細 ギャップを形成する方法もある。 (2) 表面シート 使用される機器の顔となる表面シートは、最も重要な構成部品である。表面シート材には、感触、 反射、透明性、耐薬品性・耐候性、機械的強度などの特性が要求され、色々な材料があるが、現在は、 ポリエステルシートが多く使用されている。また防犯上の対応から金属板を用いたものもある。表面 シート形状は、フラットなものの他に、操作性やデザイン性を考慮して凹凸を付けるエンボス加工を Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 5
Page7

8.3 特長と構造、8.3.1 タクティルプッシュスイッチ

施したものがある。 (3) 操作性・入力確認方法 一般的に上部・下部電極シートとスペーサで構成されるメンブレンスイッチの入力操作では、0.1 ~0.3 ㎜の僅かなストロークを経て上部・下部の接点が接触する構造のため、明確な入力操作感を得 ることが難しく、そのため、クリック感を付けたり LED を用いることがある。クリック感を得る方法 としては、上部・下部の接点間や上部電極シート上に金属ドームを設置したり、クリックゴムを上部 電極シート上に設置する方法がある。また、上部電極シートや表面シートをプレス加工しクリック感 を得る方法もある(詳細は 8.3.2 項で後述)。 8.3 特長と構造 8.3.1 タクティルプッシュスイッチ タクティルプッシュスイッチは、前述のタクティルフィードバ ック機能を持つスイッチで、その機構を持たせるために、可動接 点に金属材料を使用したメカニカル接点タイプと、導電性ゴムを 使用したエラスティック接点タイプがある。以下この二つに分け 特長、構造を説明する。 (1) メカニカル接点タイプ ① 特長 (a) 作動量が小さく、かつシャープなクリック感を有する。 (b) 初期接触抵抗が、10mΩ程度であり小さい。 (c) 薄型、小形化が可能である。 (d) 操作音がある。 ② 基本タイプの構造 代表的な構造を図 8.10 に示す。構成部品及び材料は次 のとおりである。 キーステム(アクチュエータ):一般用は変性 PPO、耐熱用 は PPSなどの成形品 カバー:プレス加工品(SUS 板が多い) 可動接点:ドーム状プレス加工品(一般用はりん青銅、耐 熱用は SUSなどの板が多い) 図 8.10 メカニカルタイプの構造 ハウジング:一般用は PBT、耐熱用は PPS などの成形品 端子:黄銅 固定接点:黄銅 ハウジングには、PBTまたは PPSのような比較的耐熱性の高い材料が使用され、固定接点がインサ ート成形される。 可動接点がキーステムを介して押下されると、ドーム状板ばねの飛び移り現象により、図 8.11の Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 6
Page8

荷重―変位特性図のように、押下の途中にピークを有 するタクティルフィードバック感触が得られる。 キーステムは、ベースにカバーをカシメ止めするこ とにより、上方向の抜け防止がされ、筐体を構成して いる。 ③ シールタイプの構造 シールタイプは、基板実装後のフラックス洗浄の用 途に使える。 ベースに可動接点を乗せ、その上にシールゴムを介 してプランジャで操作する。シールゴムはスペーサを 図 8.11 荷重-変位特性図 挟んでカバーの固定により締付け力を与えられる。 このタイプにはまた、プランジャと可動接点の間に弾性体があるため、操作時の音が小さいとい う特長も有している(図 8.12)。 ④ ヒンジタイプの構造 人間の指で操作しやすいようにヒンジボタンをつけたタイプで、ハウジングに LED を装着するタ イプもある(図 8.13)。 また、ボタンとスイッチの間に操作用のコイルばねを入れ、ストロークの拡大を図るものがある。 ⑤ 面照光タイプの構造 押しボタン部をレンズ形状とし、その下の LED の光を拡散し照光するタイプである。 可動ばねの上に操作ボタンを置き、その上に LED を配置し、カバーを反射グレードのプラスチッ クで構成することで LEDの横から出る光を上部へ反射させ、面照光化を図る(図 8.14)。 図 8.12 シールタイプの構造 図 8.13 ヒンジタイプの構造 図 8.14 面照光タイプの構造 図 8.15 エラスティックタイプの構造 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 7
Page9

8.3.2 メンブレンスイッチ

(2) エラスティック接点タイプ ① 特長 (a) 使用温度範囲が広い (b) 耐環境性、特に H2S 雰囲気での接触安定性が高い (c) メカニカル接点タイプに比べ操作ストロークが長く(0.8~1.5mm)、かつソフトなタクティルフィ ードバック感触を有している。 (d) 操作音が小さい ② 構造 代表的な構造を図 8.15に示す。導電ゴムを押下することにより、ベースにインサート成形された 一対の固定接点間を導通させ、スイッチの開閉を行う。 導電ゴム接点の押下は、導電ゴム接点上に置かれたプランジャを介して行われる。 ゴム接点は、カップの形状をしており、絶縁ゴムと導電ゴムの二色成形からなる。導電ゴムは、 シリコンにカーボンブラックを添加したものが一般に使用されている。 接触抵抗は、通常数 10~1kΩ程度で金属接点に比べ高い値を示している。 カップ状のゴムは、押下に従い座屈を起こし、タクティルフィードバック感触を達成する。 なお、接点材料については、導電性ゴムの代わりに、カーボンペーストをコーティングしたもの もある。 ハウジングには、ゴム接点の復帰不良を防止するための空気流通が必要である。 8.3.2 メンブレンスイッチ (1) 特長 ① スイッチの薄形化には最も効果的で、スイッ チ部の厚みは 0.3~0.5mm 程度で製品化が 可能である。 ② 接触部が密閉された構造をとることができ、 防塵、防滴効果が得られ、優れた耐環境特性 が得られる。 ③ 用途に応じたカスタム設計ができ、デザイン、 回路、特性を自由に選定できる。 (2) 基本構造 基本的にメンブレンスイッチは、表面シート と、シート材に導電性ペーストの印刷された接 点をスペーサを介してつくられるギャップの 上下に配置した接点部からなる。 図 8.16 メンブレンスイッチの基本構造と断面 接点の印刷されるシートの材料は、耐環境性、 機械特性、電気特性に優れたポリエステルが用いられる。 印刷で接点と共に回路引き回しが行われ、併せて出力用のテールも同時に形成される(図 8.16)。上・ 下の接点は同一シート状に印刷され一辺で折り曲げて組立てられる構造や電極シートとして別々に印 刷された部品を組合わせる構造方式のものもあり、コスト、使用環境などを考慮し選択ができる。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 8
Page10

8.4 定格と特性、8.4.1 タクティルプッシュスイッチ

印刷で接点や回路を形成する導電性ペーストには、銀ペーストが用いられ、一般的に銀ペーストの 上からカーボンペーストをオーバーコートする方法が採用されている。これは、銀のマイグレーショ ン防止と銀接点表面の酸化・硫化防止のためである。マイグレーションは、高温度下で直流電圧を印 加することにより、銀がパターン間を移行する現象で、パターンの短絡事故の原因となる。最近は、 銀とカーボンを混入させたペーストも使用されている。 接点シート裏面には、印刷や両面テープを用いて粘着層が形成され、筐体などへの取付けが容易にで きるようになっている。また、メンブレンスイッチの信号出力には専用のコネクタが用意されている。 表面シートは使用目的に沿って、外観、透過性、厚みのなどの要素で材料が選定され、デザイン配 置された図柄や文字が裏面より印刷されたものが使用されている。 (3) クリック接触・構造 クリックアクション付与のために、図 8.17に示したようにいくつかの構造が考えられる。 ① ドーム状金属板 上部・下部電極シートの間や上部電極シート上にドーム状に加工した金属板を設ける。 ② クリックゴム 上部電極シート上に一色のゴム成形品を設ける。ゴムの材質は、広範囲な使用温度範囲(-55~ 200℃)、優れた耐候性、屈曲耐久性などの点でシリコンゴムが使用される。 形状は、タクティルプ ッシュスイッチの場合と同じくカップ状である。 ③ 表面・接点シートのドーム成形 表面シートの操作部や接点を印刷した上部電極シートを熱プレス加工し、クリック感が得られるド ーム状に永久変形させる。 図 8.17 クリック感付与構造 8.4 定格と特性 8.4.1 タクティルプッシュスイッチ 前述のようにタクティルプッシュスイッチに関する規格は、EIAJ RC-5126A があり、メカニカル接点タ Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 9
Page11

8.4.2 メンブレンスイッチ

イプとエラスティック接点タイプに分類して、定格と特性が示されている。ここでは、タクティルプッシ ュスイッチの機能動作特性、電気的特性、耐久性、環境特性などについて述べるとともに、表 8.2 に代表 的な特性を示す。 (1) 機能動作特性 作動力は、一般にスイッチの大きさ・種類によって異なり、個別に規定されている。 また、作動量については、作動力の規格値の最大値を加えて全ストロークを測定する。 (2) 電気的特性 接触抵抗は、可動接点の種類によって異なり、通常メカニカル接点タイプの方が低い値を示す。な お、安定した接触抵抗を得るには、作動力以上の荷重を操作部に加えて測定する必要がある。 (3) 耐久性 小負荷領域で開閉されるため、一般に無負荷開閉の回数と負荷開閉の回数は同じになっている。開 閉回数は、通常 10万回から 500万回程度の範囲内で、各スイッチの個別の規格により定められてい る。 (4) 環境特性など EIAJ RC-5126Aは、耐熱性、耐寒性、耐湿性、温度サイクル、塩水噴霧、硫化水素、耐振性、衝撃、 はんだ耐熱性などの試験を規定している。なお、高信頼を要求する場合には、シールタイプや接点 部に金めっきを施したタイプなどの採用が好ましい。 表 8.2 タクティルプッシュスイッチの特性 項目 メカニカルタイプ エラスティックタイプ 定格 DC24V 50mA DC5V 10mA 接触抵抗 100mΩ以下 1kΩ以下 絶縁抵抗 100MΩ以上 耐電圧 250V(又は 500V)以上 バウンス 10ms以下 作動力 1.96N(又は 2.94N) 0.98N(又は 1.96N) 作動量 0.3mm 1.2mm 試験負荷条件:DC5V 10mA 電気的耐久性 開閉回数:50万回 使用温度範囲 -25~75℃ はんだ耐熱性 350℃ 3s 又は、260℃ 5s 8.4.2 メンブレンスイッチ メンブレンスイッチの定格と特性を、機能動作特性、電気的特性、耐久性、温度特性に分けて述べると ともに、表 8.3 に代表的な特性を示す。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 10
Page12

8.5 正しい選び方・使い方

表 8.3 メンブレンスイッチの特性 項目 特性 定格 DC2~24V 1~20mA 接触抵抗 500~1kΩ以下 絶縁抵抗 50~100MΩ以下 耐電圧 AC125~250V 以上 バウンス 10~20ms 以下 操作力(作動力) 0.5~3.5N ストローク(作動量) 0.1~0.3mm 使用温度範囲 -10~50℃ 保存温度範囲 -20~60℃ (1) 機能動作特性 メンブレンスイッチの機能動作特性は、構成される部品精度、あるいはその組立精度に大きく左右 される。このため部品寸法と機能動作特性との相関の基礎データを蓄積しスペース厚み、スペーサ 穴径、各シートの厚みの影響を十分考慮して設計することが重要なポイントとなる。また、接点押 圧により接触抵抗が変化するので、操作力を厳密に決定するには、この点に対する配慮が必要であ る。 (2) 電気的特性 定格、接触抵抗、絶縁抵抗、耐電圧などを規定している。 (3) 耐久性 接点の耐久性の選定基準は、使用目的により大きく異なる。メンブレンスイッチでは、通常 50 万回 から 100 万回程度の寿命を保証できる。耐久性で問題となるのは接触信頼性である。接触抵抗の変 化は、打鍵による接点表面変化(摩耗)が原因である。カーボンペーストのオーバーコートのない 場合は、銀接点の酸化・硫化により接触抵抗が大きく変化する場合もある。 (4) 温度特性 メンブレンスイッチは完全密閉構造であり、じんあいの影響を受けることが少ない。しかし反面密 閉構造であり雰囲気の温度の影響は考慮しなければならない。温度変化によりスイッチ内の空気の 膨張、収縮がおこりスイッチの誤動作、押圧、バウンスの変化など機器の信頼性に決定的な影響を 与える場合がある。一般にスペーサ構造の工夫、部品材料の選定などに配慮する手段がとられる。 8.5 正しい選び方・使い方 (1) 有接点である限りバウンスは存在する。操作回数が増えると共にバウンスが増加していく。タクティ ルプッシュスイッチ、メンブレンスイッチともに、前述のように初期は 10ms以下、耐久性試験後 20~ 50ms以下としているものが多く、設計の際には、バウンス除去回路の必要性の検討を要する。 (2) 一般のタクティルプッシュスイッチは、底面に固定接点のある対向接触方式でかつ防塵構造を有して いないため、ちり、ほこりの多い環境で使用される機器、装置での使用においては、ごみが内部に侵入 しないような考慮が必要である。接点部へのごみの侵入は、接触信頼性を低下させ、接触不良による動 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 11
Page13

8.6 検査と試験

作不良原因となる。特に高信頼性を要求される機器・装置については、シールタイプの採用や接点部に 金めっきを施した高信頼タイプを選択する事が望ましい。また、押しボタン上にゴムキャップやシート をかぶせる方法が考えられる。 (3) タクティルプッシュスイッチは、はんだ付け実装時にフラックスの浸漬回数などの条件を厳しく管理 する必要がある。ここの条件の管理により、はんだ付け時の熱変形、フラックス内部浸入による動作不 良を防止することができる。 (4) タクティルプッシュスイッチ(特にメカニカル接点タイプ)については、押切り時のストッパが可動 接点、固定接点であるので、強い押圧荷重をかけたり、衝撃荷重をかけたりすることで、可動接点また は固定接点が変形し、クリック感触が変化したり、接触不良やライフの劣化などが考えられる。従って、 押切り荷重は、作動力の 1.5~2倍までで使用することが肝要である。 (5) メンブレンスイッチは密閉構造であり、ごみの影響を受けることは少ない反面、その構造のため高温 に保つと常温時より内部の空気が膨張しフィルムをフォーミングしたときと同じ状態になる。これを常 温に取り出すと、接点間ギャップが初期より短くなり、最悪のときには、スイッチが ON の状態のまま になることもある。60℃以上の高温にさらす恐れのある時にはこの点の注意が必要である。 (6)メンブレンスイッチにおいては、カーボンペースト自体に吸水性があり、回路抵抗が増加する傾向にあ る。この回路抵抗の増加は、フラットケーブルを接続するコネクタのコンタクトの材質、テンションに 大きく依存するので、コネクタの選択を慎重に行うことが大切である。 8.6 検査と試験 試験には、形式試験と受渡し試験があり、受渡し試験の項目は受渡し当事者間の協定により形式試験の 中から選択または追加して行う。その際、判定条件も同様に当事者間で協定に基づいて決定されている。 形式試験の項目(タクティルプッシュスイッチを代表例とし EIAJ RC-5126A の試験項目より引用)とし て次のものがある。 (1) 外観及び構造 (2) 寸法 (3) 表示 (4) 接触抵抗 (5) 絶縁抵抗 (6) 耐電圧 (7) コンタクトバウンス (8) 作動力 (9) 作動量 (10) 端子強度 (11) 操作部強度 (12) はんだ耐熱性 (13) はんだ付け性 (14) 耐振性 (15) 衝撃 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 12
Page14

(16) 機械的耐久性 (17) 電気的耐久性 (18) 耐寒性(貯蔵耐寒性を含む) (19) 耐熱性(貯蔵耐熱性を含む) (20) 耐湿性(定常状態) (21) 温湿度サイクル (22) 温度サイクル (23) 塩水噴霧 (24) 硫化水素 無断複写・転載を禁じる。 Copyright 2013 NECA All rights reserved. http://www.neca.or.jp/ 13
Page15

スイッチ・表示灯編 リミットスイッチ